題名のない風景




村はずれの麦畑に立ちつくす
明るい午后の昼下がり
愛らしくそよぐ花  名も無き足元の花
豊穣の秋を謳おう  うららかな青空のもと
広場に集う子供らの  
朗らかな笑い声が吸い込まれていく
緑陰の梢に囀る  小鳥たちの子守唄
丘の上で午睡まどろむ  恋人たちのシエスタ




嗚呼 教会の鐘が
どこまでも高らかに鳴り響く

収穫を終えた人々が
畑から家へと旅立ってゆく
其処にあるぬくもりを 愛を
求めていくように




誰もいない麦畑に立ちつくす 
紺青の夕闇
右は村への帰り道
左は夜空を閉ざす星屑の故郷さと

世界中の声が聞こえなくなった僕は
右手の銃を空へかかげ 引き金を引いた


そして僕はめぐる季節の中に立ちつくす
空に放った弾丸が  いつか僕を裁きに来るまで








 


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