いつかきみと   この境界の向こうへ        
      
         翠碧の硝子の内側に広がるは  偽りの楽園
 

       眩暈にも似た水槽で     揺らぐ世界を凝視せよ

















 


 水槽に閉じ込められた

     コォラルピンクの海



  まがいものの太陽と 
              
     ペンキで塗られた空と    雲




       甘いゼリーの波に   揺られながら


  まだ泳いだことのない

        マリンブルゥの楽園を夢見た



      











  僕の地球儀は硝子球

      歪んだレンズの中に  きみを閉じ込めて




なまぬるい水のなか  ふたり 
 

     夢見るやうに  溺れてしまおう





―――もう二度と
           生れ堕ちることがないように
 






      




          
  奏でだす  虚無を紡ぐ泡沫の調べ

      ぶれる残像  僕らは水中の囚われ人
 


 
















           
    ふりそそぐ   スコォルは幻覚。

      躰を撫ぜる  季節風は夢魔の吐息。

  愉悦の極み  むせ返る南国の花の馨  椰子のざわめき

      温室は  極彩色のパノラマ


  比翼のはばたきは  天上への誘い



            
     
  



 瞳を閉じた瞼の裏に    無数の蝶が飛び交ってゆく

         蒼天の彼方へ    記憶の亡骸を葬ってゆく

    僕を呼ぶ幽かな声さえ  最早届くはずもなく



   砕かれた硝子の燐粉が   視界を取り巻き
      
        セルロイドの太陽は  ばらばらに散らばった




                          窒息寸前の僕を苛むのは
             

      午睡んだ緑の群れの   夢の欠片だったのだらうか?  













 


   いつかの螺旋階段
      きみとふたり   手を繋いでどこまでも行かう


          幼い日の  あまく  あわい 思い出


 瑠璃色の水平線も   紺碧の海原も

       きみと僕のためだけに    あったのにね



   
       星屑をつめた砂時計が  落下する


          二人で登り続けた階段は  砂に埋もれて見えなくなった
 







ねぇ あのとき



 きみの温もりを 握り返していたら



ずっと
    繋がったままでいられたのかな、




















                         




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写真:黒船屋  
場処:アクアマリンふくしま アクアワールド大洗